《MUMEI》

別の一人掛けソファに座って、すっかり冷めてしまったコーヒーを飲む。



「服、洗濯機に入れといてね。洗って乾燥機にかけちゃうから」

「ありがとうございます。…すみません、何から何まで」

「気にしない気にしない。情けは人のためならずってね」


笑いながら答えていると、猫がぴょん、と青年の膝に飛び乗った。



「おっと……この猫、飼ってらっしゃるんですか?」

「いや、雨の日だけ遊びにくる変わりもんだよ。君を見つけたのもその子なんだ。礼を言っときな」



冗談めかして言うと、青年は穏やかな笑みを浮かべて猫の背を撫で、小さく「ありがとう」と呟いた。

うん、いい顔だ。





ふと時計に目をやると、夕方を通り過ぎてもう6時近くになっていた。

窓の外を見ると、雨はすっかり弱まっている。


私は洗濯機を回してから、夕食の準備を始めた。


「よかったら夕飯食べてって」

「え、いいんですか…?」

「いいのいいの。どうせ服乾くまで時間かかるし、そいつも居座るつもりみたいだから」


相変わらず青年の膝で寝っ転がる猫を指差し笑う。

青年も控えめに笑うと「じゃあ、お言葉に甘えて」と頷いた。

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