《MUMEI》
誕生日会
「どうも〜、『酒の猪熊』で〜す!」


「はいはい」


(…ん?)


「あれ、蝶子ちゃんは、…寝てるのか?」


「昼間忙しかったからね」

(いけない!)


私はガバッと起き上がった。


「すみません、咲子さん!」


二人がいるホールに出ると、既に雅彦の誕生日用にセッティングが終わってしまっていた。


「これ、一人で?」


私は、恐る恐る咲子さんに確認した。


「まさか!ちゃんと愛理ちゃんと漫才コンビに手伝ってもらったわよ」


「…来たんですか?」


咲子さんは頷いた。


どうやら私は、自分で思ったより熟睡してしまったらしい。


「起こしてくれれば良かったのに」


「皆、『蝶子ちゃんの寝顔可愛いから許す』って言ってたから、大丈夫よ」


「そういう問題じゃないです」


(寝顔見られたなんて、最悪…)


私にとって、唯一の救いは、寝顔を見られたメンバーの中に『シューズクラブ』の店員がいなかった事くらいだった。


「そのかわり、今から大変になるからね」


「は、はい!」


(頑張ろう)


「頑張れ!」


飲み物一式を運びながら、克也さんが私を励ましてくれた。


「はい!」

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