《MUMEI》

午後八時。


私は『本日貸し切り』の札を『クローバー』の入口にかけた。


『クローバー』の店内には、『シューズクラブ』の店員を除いたメンバーが集結していた。


『シューズクラブ』の営業時間は終わっていたが、さすがに今日はすぐには来れないだろうと、この時間から誕生日会の予約が入っていたのだが…


十五分後。


「お待たせ〜!」


俊彦を先頭に、『シューズクラブ』の四人が『クローバー』に来店した。


「俊彦…」


春樹さんの体が震えていた。


春樹さんは、軽そうに見えるが、とても真面目で、時間にはうるさかった。


「ん?どうした?」


「何だ〜?! その格好」


これがまだ、四人が慌ててきたのなら、皆で春樹さんを止めただろう。


しかし


皆は、春樹さんと同じ気持ちだった。


…もちろん、私も。


「え? どこか変?」


俊彦は、綺麗に整った髪や、ビシッと着込んだ黒いスーツをチェックした。


(変じゃないから、おかしいのよ)


俊彦は、『シューズクラブ』では、スニーカーが似合いそうなラフな服装をしていた。


「その整い過ぎた格好が変だって言うんだよ!
お前風呂まで入ってきただろ!」

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