《MUMEI》
*信頼*
「味はどうだ?」

「とても美味しいですよ」

「そうか、それは良かった」

瑠果は満足げに笑った。

すると、

「お嬢様もどうぞ」

紫堂が一切れを皿に乗せ差し出す。

するとやはり紅茶がいると思い、瑠果は椅子から立ち上がろうとした。

それを紫堂が止める。

「僕に行かせて下さい」

「だが」

「大丈夫ですよ。もう火傷したりはしませんから」

「本当か?」

「はい」

「ならば良いが‥」

まだ納得のいかない様子の瑠果は、イチゴにフォークを刺したまま手を止めている。

「──お嬢様」

紫堂は彼女の傍らへ移動すると、その手を握った。

「信頼して下さい。僕はこれでも執事ですから」

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