《MUMEI》
*贈物*
紫堂がポットとカップを乗せたワゴンを押して戻って来ると、瑠果はまだイチゴを刺したままのフォークを握っていた。

「お待たせしました」

紫堂は紅茶を注ぎ始める。

「どうぞ」

「‥‥あ、ああ。ありがとう」

ぼんやりしていたらしく、瑠果は少しうろたえている。

「どうされました?」

「これではお前の誕生日にふさわしく無いな、と。‥?──そうだ」

「お嬢様‥?」

「すまん紫堂、直ぐに戻る」

瑠果は突然席を立つと、何かを取りに部屋へと向かった。

そして戻って来ると、それを紫堂に差し出した。

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