《MUMEI》

「気ィつけろよ?」
「あ、あぁ」

震える手でドアノブをどうにか回し、外に出る、一刻も早くここを出たい、ちゃんと礼を言わなければと思うが振り返れなかった。


どういうことなんだ!?
一体俺はどうしたってんだ!?


荒れ狂う疑問符を吹き飛ばすように俺は夏の夜の街角を走りだす。
もう何も考えたくない考えるな思い出すな!これ以上詳細に思い出してしまったら俺は!

俺は死ぬ!!

老人にぶつかりそうになっても、トラックに轢かれそうになっても、歩幅を緩めることなく全力疾走した。
ただひたすらに。

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