《MUMEI》

「あり…がと」


(?)


私が側にいる間、雅彦は何だか様子がおかしかった。

(まだ昼間の事気にしてるのかな?)


顔を見ようとしたら、思いきりそらされてしまった。

「蝶子ちゃん、終わった?」

「はい」


私は慌てて厨房に入った。

「えぇ〜、蝶子ちゃん一緒に飲まないの?」


俊彦が私の後を追いかけてきた。


グイッ


「お前はこっちだ」


「克也!せっかく蝶子ちゃんの為に着てきたスーツがしわになるだろ」


(私の為って…)


「今日はお前の弟の誕生日だ。

兄として祝ってやるのが普通だろ?」


「克也さんの言う通りよ」

(ん?)


私達の様子を見ていた祐介さんと勇さんが、大きな紙を広げた。


「嫌いになるよ?」


私は紙に書かれた文字を何気なく読んだ。


「そんな〜、祝う!祝います!」


俊彦は回れ右をして、雅彦のいる上座のすぐ側を陣取った。


「え〜、皆様。今宵は我が愛しの弟の雅彦の為にこのような盛大なパーティーを開いてくださってありがとうございます」


勝手にスピーチを始める。

「雅彦が生まれた時は…」

「「雅彦おめでとう!」」

祐介さんと勇さんが叫んだ。

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