《MUMEI》

皆がお茶漬けを食べ終わった頃。


私は丁度二十一本目のろうそくを付け終えた。


この頃になると、ホールの連携もしっかりしていて、片付けもスムーズだった。

「いいわよ、蝶子ちゃん」

咲子さんが店内の照明を暗くした。


皆が誕生日の歌を歌い始める中、私は雅彦の前にケーキを運んだ。


私がケーキを置くと同時に、歌が終わる。


雅彦は


さすがの肺活量で


ろうそくを一気に吹き消した。


割れんばかりの拍手。


咲子さんが照明を元に戻すと


照れ笑いを浮かべる雅彦がそこにいた。


「じゃあ、切るね」


私は、雅彦の目の前でケーキを切り分け、皿に盛り付けた。


『HappyBirthday』と書かれたチョコプレートを乗せて、雅彦に手渡した。


「次、俺ね!」


「あっちにもあるけど…」

「早くしてよ」


私の隣には、皿を持った俊彦。


俊彦の後ろには、何故か和馬。


そして、更に後ろに…


「…」


何故か、当たり前のように無言で孝太も並んでいた。

「やってあげれば?」


(え〜)


「えらいぞ!さすが我が愛しの弟!」


(仕方ない)


私は俊彦の皿にケーキを盛り付けた。

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