《MUMEI》
*時化*
波が荒れ、風が唸る。

ヨットは波に弄ばれていた。

「‥‥すまん紫堂、私がきちんと把握しきれていなかったが為に‥」

「お嬢様に責任はありませんよ、これは天候の問題ですから。──風向きが変わりさえしなければ‥孤島へは辿り着けるはずです」

「ああ。だが──」

瑠果は考え込むようなそぶりをみせた。

「まさか時化になるとは思わなかったな‥」

「あんなに晴れてましたからね‥」

一刻も早く天候が回復する事を、2人はただただ祈るばかりであった。

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