《MUMEI》

結局茶髪男が店にやってきたのはピークの過ぎた日付の変わる頃だった。あんなに忙しかったのが嘘のようにほとんどの客がひいて、俺と眼鏡の店長は同時に休憩をとっていた。

わたわたと休憩室のドアを開けて入ってくる茶髪男。走ってきたのか息が弾み、前髪が額に張り付いている。
ちょうど休憩に入っていた俺たちと目が合うなり平謝りに謝る。

「遅れてすいませんでした!」

疲れすぎていて怒る気にもならないのか、もともと気が長いのか、店長はハイライトの煙を吐き出しながら言う。

「どしたよー?めずらしいな」

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