《MUMEI》
*転覆*
だが波は更に激しさを増す。

小さなヨットでは到底持ち堪える事は出来そうもない。

「無謀だったな‥」

「お嬢様‥?」

「もう少し大きな船にするべきだったか‥」

「お嬢様が落ち込む事はないですよ」

すっかり意気消沈した瑠果を慰める紫堂の視界に、何かが映った。

「あ、孤島‥ってあれの事ですか?」

「?──おおっ、あれだ!」

途端に瑠果は燥ぎ出す。

「お、お嬢様、船が揺れ‥」

だが紫堂が言った時にはもう遅かった。

「!?」

船が、右に傾いた。

その直後、2人の耳元で、飛沫の上がる音がした。

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