《MUMEI》

「や、えと、」

なぜか口ごもる茶髪男、普段なんでもぺらぺら喋るくせにらしくない。いつも寝坊しただの忘れてただの悪びれもなく、ただちょっと媚びるような顔でいけしゃあしゃあと言ってのけるのに。
何かあったのか?店長と向かい側のパイプ椅子に座って同じようにラキストを食みながら、気まずそうに視線を泳がせている茶髪男に目をむける。

「なに?別に怒らないから言えって」

店長の学校の先生のような柔らかい口調に、茶髪男はしばらく唸ったあと言った。



「‥‥痴漢にあって警察行ってました」

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