《MUMEI》

「…ホモ?」


孝太がポツリと言った。


皆が、ドッと笑う。


(良かった)


俊彦の奇行で、場の空気が和んだ。


「ただいま〜…て、何してんの?」


トイレから出てきた雅彦が、抱き合っている和馬と俊彦を見つめた。


正確には、俊彦が一方的に和馬を抱き締めていた。


「おぉ、雅彦!」


俊彦は和馬を離した。


そして…


ガバッ!


「愛してるぞ〜、弟よ!」

「あ、兄貴?!」


今度は戸惑っている雅彦に抱きついた。


「禁断のホモ?」


孝太の言葉に皆がまた大爆笑した。


「ふ〜ふ〜ふ〜」


俊彦はその後。


男性陣に次から次へと抱きついた。


被害を免れたのは、孝太だけだった。


そのおかげ(?)で


特に男性陣には


俊彦に抱きつかれた記憶と

『雅彦の誕生日だったよな…』という記憶しか残らず

私の胸云々の話を持ち出す者は


その後、誰もいなかった。

(屈む時は、気をつけないとな…)


私は、それからは、極端に大きなトレーナーではなく、ほんの少しゆとりのあるトレーナーやTシャツを着るようになった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫