《MUMEI》
知られたくない気持ち
「この間の金曜日、大丈夫だった?」


仕事からの帰り道、美幸から電話がかかってきた。


「すぐに完治したよ!ごめんね、心配かけて。」


私はあれから千夏にも美幸にも連絡していなかった。


「なら良かった。実は少し気になってたんだ・・・」


美幸は私の反応を見ながら言葉を続ける。


「ほら、私が太一の話したじゃない?それで気分が悪くなっちゃったのかなって・・・」


私は図星で声が出なかった。


「やっぱり・・・まだ聞きたくないよね。あんな話。
ごめんね・・・私、無神経だった」


美幸が本当に申し訳なさそうに謝る。


「やだっ、美幸のせいじゃないよ!あの日は本当に疲れてたの。最近すごく忙しいし・・・」


私は一生懸命に熱を仕事のせいにした。


「そう言ってもらえて良かった」


美幸はそう言ったけど・・・


実は、太一への未練を見抜かれてる気がして私は不安になった。


だから、太一には未練がないと否定したくて、もう一度言った。


「実はあの日、朝から調子悪かったのよ。だから千夏に佐久間さんを呼んでもらって大正解☆」


そして最後の一言。


「佐久間さんが親身に看病してくれたお陰で翌朝には熱が下がってたのよ!すごくない?」

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