《MUMEI》
*恩人*
「───さま」

「‥‥‥‥‥‥‥」

「──さま、‥嬢──」

「──────?」

「お嬢様‥っ」

瑠果が目を開けると、そこには今まで必死に自分を呼び続けていた執事の姿があった。

「紫堂───お前‥」

「ご無事で何よりです、お嬢様」

「私は‥あの後‥」

「意識がなかったので心配しましたが──気がついて良かったです」

「助けてくれたのだな‥ありがとう」

「お嬢様‥?」

「お前は私の恩人だな」

すると紫堂はほんの少し頬を染めた。

「いえ、恩人だなんて──」

「もう一度言おう。お前は私の恩人だ」

「‥‥‥‥‥‥‥」

紫堂は今度こそ完全に赤くなっていた。

そんな彼に瑠果は続ける。

「それからどうしたのだ?」

「あ、それから──波が少し味方してくれたようで‥。そのお陰で何とかこの孤島の岸に辿り着く事が出来たんです」

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