《MUMEI》
*欠伸*
「ああ、分かった‥」

瑠果は紫堂に釣竿を手渡すと、別荘の方へと踵を返した。

「無理をするなよ?」

「はい」

「また様子を見に来ても良いか?」

「いいですよ」

すると瑠果はニッコリと笑って戻って行った。

紫堂は釣糸を垂らすと、流れて行く雲を見つめて魚が釣れるのを待つ。

だが。

なかなか連れない。

「‥‥‥ふぁ‥」

思わず欠伸が出る。

「──やはり難しいか?」

「!?」

突然瑠果の声がして、紫堂はビクッと肩を上げた。

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