《MUMEI》

それと―――……。


この時の僕は、すこぶる機嫌が良かった。


堀川は、その理由もちゃんと知っている。


これは2週間置きに僕に訪れる現象だ―…。


大切な人と会う前の僕は、恋する中学生のような高揚感を顔に出してしまうのだろう。



―――我関セズ……。

堀川は、僕のささやかな癒しの時を黙って見逃してくれる。


そんな彼は、僕の心強い懐刀だ…。



僕は社長室を後にし、会社の表玄関前に横付けされた、シルバーの高級車に乗り込んだ。



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