《MUMEI》 *小鳥*「お嬢様‥?」 「まだいい。しばらくここにいたい」 「‥?」 紫堂は瑠果の視線の先を見た。 木の枝。 その枝に、巣があった。 そしてその中には巣立ちそびれたらしい小鳥が1羽、外の様子を窺っているのである。 「気になりますか?」 「可愛いと思ってな」 「──そうですね」 時折可愛らしい囀りが聞こえる。 「待っているのだろうな‥」 「?」 「母親を‥」 「お嬢‥様‥?」 「早く帰って来るといいな、あの子の母鳥が」 「そうですね」 まるで母親のような瑠果の眼差しに、紫堂は思わず見とれていた。 前へ |次へ |
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