《MUMEI》

私は、つい言ってしまったのだ。


『あの…よかったら、雨の日の配達、私も行きますよ』


ーと。


『本当?!助かるわ!』


その時、私は咲子さんと交互に行くつもりで発言したのだが…


いつの間にか、雨の日は私が『シューズクラブ』に行くようになってしまっていた。


しかも、雅彦は、私の…


『胸を見た』事件(?)以来

未だに私を避けていた。


だから、配達に来た私の対応をするのは、他の三人になるわけだが


『責任者の義務だから』という、もっともらしい理由で、俊彦が対応する事が圧倒的に多かった。


(やっぱり、あの時見たのは幻だったんだな)


軽いノリの俊彦と接する回数が増えるにつれて、私は実感した。


『あの時』


雅彦の誕生日会で、和馬と揉めた俊彦が


昔の『俊兄』に見えたのは

(錯覚よね)


そして、私はようやく『クローバー』に辿り着いた。

「ただいま戻りました」


「おかえりなさい。お疲れさま」


咲子さんは、すぐに温かいコーヒーを入れてくれた。

「ありがとうございます」

私はそれを飲んで、気持ちを切り替え、調理を始めたのだが…


結局、昼になっても雨は止まず…

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