《MUMEI》 「じゃあ…行ってきます」 「気をつけてね!」 私は傘をさし、弁当と味噌汁を持って『シューズクラブ』へ向かって歩き始めた。 正直、ぼーっとしていた。 だから バシャッ 「キャッ!」 反応が遅れた。 朝から雨が降り続けていたから、道路には大きな水溜まりが出来ていたのだ。 そこに、大型トラックが勢いよく走ってきた。 (あ〜あ) 幸い、とっさにかばったから、荷物は無事だが、私はあんまり無事では無かった。 (…帰ってから着替えよう) 私はとりあえず、『シューズクラブ』に向かった。 「すみません、…」 ガチャッ 「いらっしゃい!… どうしたの?!蝶子ちゃん!」 私を見て俊彦は悲鳴をあげた。 私はスニーカー・ジーンズ・長めのトレーナーの裾まで濡れていた。 「ちょっとね。だから、中には入れないから…」 「何言ってるの! 風邪引いたらどうするの!」 「別に、このくらい」 「昔そう言って次の日熱出したくせに!」 (え? そんな事、覚えてるの?) 驚いた。 私は結局俊彦の勢いに負けて、『シューズクラブ』の事務所に入る事になった。 「はいタオル」 前へ |次へ |
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