《MUMEI》
*雨音*
昼前になると、窓の外で滴が落ちる音が聞こえ出した。

「おお、雨だ」

瑠花はガラス越しに、空から降る滴を眺める。

「少し前まで晴れていたのだが」

「本当ですね」

「紫堂」

「はい」

「何か聞こえないか?」

「いえ、雨の音以外は──」

すると瑠果は空の花瓶を手に2階へと上がる。

紫堂は不思議に思いながらも彼女の後に続いた。

「やはりそうだったか」

「?」

「見ろ、あそこだ」

「‥‥ぁ」

瑠果の示す先では、滴が落ちてきている。

「昨日上った時には屋根に損傷は無かったと思ったのだがな‥。確かに古い別荘ではあるが‥本当に雨漏りがしていたとは」

瑠果は雨水を受けめられる位置に花瓶を置くと、しばらくその場にしゃがんでいた。

「どうされました?」

「いや、綺麗な音だと思ってな」

「確かに──そうですね」

「だがこのままではいかんな。雨が止んだら様子を見て来る」

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