《MUMEI》
デート
「流理さん、どうしたんですか?その大荷物」

「はは…ちょっと」

あの雰囲気じゃ今夜は家には戻れない。

……まぁ、そういう風にしたのはオレだけど。

「今日は家に帰れそうもないんだ」

「どうしてですか?今日は確かお昼からオフのはずじゃ」

…笑ってごまかすしかなかった。

まさか家で弟とその彼女があんなことやこんなことをしているかもなんて言えやしない。

オレは制服や教科書がつまったカバンをコインロッカーに預け、環さんとデートに出かけた。

買い物をしたり、食事をしたり、楽しく過ごした。

「そういえば流理さん、今日はどこに泊まるんですか?」

「え?」

楽しく過ごせば忘れてくれると思ったのに。

「今日はホテルに泊まりますよ」

「ホテルに?今からチェックインですか?」

「あ、ハイ。一応……」

「それなら私の家に来てください!一人暮らしですし、気を遣う必要もありません」

「い、いやそんな…。迷惑ですし」

「大丈夫ですよっ!さあ預けた荷物を取りにいきましょう」

――結局、断われなくて来てしまった。

「どうぞ、入ってください」

スリッパを出してくれて、オレの抱える大荷物をさっと持って中へ運んでいく。ただ、見た目以上に重く、引きずるようにしていた。

オレは慌てて後を追いかけた。

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