《MUMEI》
*帰路*
「お嬢様、支度はよろしいですか」

「ああ。──おお、そうだ」

扉を開きかけた瑠果は中へと戻る。

「どうされました?」

「すまん、忘れ物だ」

瑠果はテーブルの上の小瓶を手に取ると、バスケットに入れて戻って来た。

「それは確か──」

「ああ。お前が見つけてくれた物だ。記念にと思ってな」

「また来年、ですね」

「そうだな。また来年」

瑠果は名残惜しそうに別荘を見上げる。

紫堂がそれに気付いて彼女に囁く。

「もう少しいてもいいんですよ?」

「いや、戻ろう。はやり私はあの屋敷で暮らすのが一番だ」

「では、行きましょうか」

2人はヨットに乗り込み、帰路を辿り始めた。

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