《MUMEI》 「ありがとう」 私は俊彦から渡されたタオルで服を拭いたが、意外と濡れていたのであまり意味が無かった。 俊彦は、私から奪いとった弁当と味噌汁を事務所の机に並べていた。 「やっぱり着替えた方がいいよ」 「い、いいよ」 (着替えも無いし…) 「よくない!待ってて!」 ? 俊彦は事務所横の階段を駆け上がった。 「わ!蝶子ちゃん、どうしたの、それ?」 「こんにちは、和馬さん」 『シューズクラブ』は休憩に入ったらしく、和馬が事務所に入ってきた。 後ろから来た孝太も無言で驚いていた。 (あれ?) 「…雅彦は?」 孝太は店内を指差した。 ? 私は、店内を覗こうとしたが… 「お待たせ!はいこれ!更衣室使っていいからね」 「これ…」 俊彦が、ジャージのズボンと長袖のTシャツを持ってきた。 私は、それに見覚えがあった。 「これ、まだ持ってたの?」 「あ〜 …うん」 それは、私が昔俊彦にプレゼントした物だった。 (もしかして、気に入らなかったのかな?) あまり着ていないように見えた。 「さ、早く早く!」 「ちょ、ちょっと!」 前へ |次へ |
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