《MUMEI》
ヨウスケの居場所。
『…ヨウスケさんは今、ここにいます。』




小さなメモ用紙を渡された。



“都立第三総合病院。”




『病院!?…どうして。』



…信じられなかった。
だって元気に里帰りしてたんでしょ?
病気なのかな?それともケガしてたりして………どうしよう。どうしよう。
まさか!不治の病で余命一年とか………。




『瑠伊さん。大丈夫ですか?落ちついてください。』



『ご…ごめんなさい。私、驚いちゃって…。』




『いえ…僕も説明不足で、すみません。ヨウスケさんは今、入院していますが命に別状はありません。』




『ただ…ヨウスケさんは明日…手術なんです。』




『…手術ってなんの?』




…聞きたいような聞きたくないような複雑な気持ちは声を震わせた。




『…瑠伊さん。とにかく病院に行って直接ヨウスケさんと話をした方がいいと思います。』




『そ…そうだね。リョウくん。ありがとう。今から行ってみます。』




『あの…この写真も持っていってもらえませんか?』



リョウくんはそう言って、トロフィーを持っているヨウスケの写真を差し出した。




『…この写真は?』




『一ヶ月前のレースで、ヨウスケさんが優勝した時の写真です。』




『…優勝したんだ。』




『はい。俺も同じレースに出たんですけど、ヨウスケさんの後を追うのが精一杯でした。本当に凄い人です。』




『…そうなんだ。』




『俺、前に一度“どうして躊躇なくアクセルを踏み続けられるのか。”って聞いたことがあるんです。
…そしたらヨウスケさんは“俺にはもう守るモノがないから。”って言ってました。』




『…守るモノ?』




『はい。
俺、その時はあんまり、意味分かんなかったんですけど、最近、彼女が出来てからスゴく思うんです。
俺がケガしたら心配して泣くだろうな…とか。“守るモノ”ってきっとそういう事ですよね。』




“…うっ。たしかに…。やだな〜。話題変えよ。”



『……それより、リョウくん。この写真はヨウスケの忘れ物?』




『いえ。俺のです。
手術前にヨウスケさんに渡したくて、さっき病院に行ってきたんですけど…会ってもらえなくて…。』




『…そうなんだ。』




“ってことは…私も面会拒否されたりして…。”




『リョウくん。今日は、色々ありがとう。写真は必ず渡しておくから。』




『はい、お願いします。気を付けて。』




寮を後にした私は急いで病院に向かった。

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