《MUMEI》
*写真*
「──────」

指輪を見つめていた瑠果はふと壁際を見る。

装飾が施された額に飾られているのは、父と2人で映っている写真だ。

3人で写っているものは沢山あった。

だが父と2人で映っている物はこれっきりなのだ。

旅好きな父は屋敷を空ける事が多かった。

瑠果は彼が帰って来る度、色んな事を教えてもらっていた。


それが大いに役立っているのは言うまでもない。

そして、あの執事が来てから彼女の暮らしは変わった。

独りきりではなくなった。

それが何よりも、彼女にとっては嬉しかったのである。

「──お嬢様、お茶の支度が出来ました」

「ああ、今行く」

瑠果は扉の向こうに向かって答えると、腰掛けていたベッドから立ち上がる。

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