《MUMEI》 夜の練習台閉店後の『クローバー』のホールに、私と和馬だけが残っていた。 私は風呂上がりで、和馬は仕事帰りだった。 私はカウンター席に腰かけた。 「はい、脱いで」 「…あんまり触らないでよ」 「…難しいよ」 「だって、くすぐったいし…」 「感じちゃう?」 「そういう事言うならやめるよ」 「あ〜、ゴメン!優しくするから、許して?」 「それにしても、毎晩来なくてもいいと思うんだけど」 「やるからには、完璧目指したいんだ!」 「はいはい。…お互い明日仕事なんだから、早目に済ませてね」 「…頑張ります」 そうして 不器用な和馬は、ぎこちない動きで 私の足に ペディキュアを塗り始めた。 「…どう?」 「う〜ん…小指がね〜」 毎晩練習してるから、最初に比べればうまくなったと思うが、小指の爪だけはまだうまく塗れないらしく、はみだしていた。 「じゃ、もう一回」 「冷たっ…ちょ、…全部?」 和馬は除光液を付けたコットンで、左右全ての足の指に塗られたピンクのペディキュアを拭き取りながら、真剣な表情で言った。 「俊彦には負けたくないからね!」 前へ |次へ |
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