《MUMEI》
*縁談*
「紫堂」

「はい」

「いつにするのだ?」

「いつ‥といいますと?」

紫堂がキョトンとして尋ねると、瑠果はカップを手にしたまま答える。

「式の事だ」

それを聞いて、紫堂はハッとする。

(せやった)

だが、瑠果はまだ15だ。

「お前はいつが良いのだ?」

「お、お嬢様、まだ少し早いかと」

「そんな事は無いだろう?」

「お嬢様‥?」

困惑する紫堂に、瑠果は続ける。

「どうだ、今度──あの教会で式を挙げないか」

「え、こっ‥今度、ですか‥?」

「ああ」

「───はい」

紫堂は微笑んでそう答えた。

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