《MUMEI》

俊彦は、頭がいいのに英語だけが出来ないように


箸の使い方だけが不器用で、他は基本的に器用だった。


しかし、和馬は


足の大きな雅彦で練習しても、はみだすほど、手先が不器用だった。


雅彦で駄目なら無理だと周囲に言われ、和馬はプライドを傷つけられた。


だから、毎年こっそり自分の足で練習してきたらしいが…


去年、試しに一人だけ女性客の足にペディキュアを塗った時


失敗したと言う。


『今年こそ、リベンジしたいんだよ』


『頑張って下さいね』


『だから…協力して、蝶子ちゃん』


『…何で私が?』


『だって蝶子ちゃんは、俺が不器用なの知ってるじゃん。

他の女の子は俺が器用だと思ってるから、ダメなんだよ。

お願い!』


『…』


正直、面倒だと思った。


『…考えておきます』


私は、断るつもりでいた。

(まさか…双子を使ってくるなんて)


翌日。


学校から帰ってきた双子に私は頼まれてしまったのだ。


『『和君に協力してあげて!』』


と。


双子は『シューズクラブ』の前を通って学校から帰ってくる事を、和馬は知っていたのだった。


私に選択の余地は無かった。

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