《MUMEI》

「うん、…いいんじゃない?」


「やった!」


三回目にしてやっと和馬も私も納得の仕上がりになった。


「間に合った〜!」


和馬の言う通り、明日から七月で、ペディキュアサービスが始まる。


「明日はもう予約入ってるの?」


「そう! 七月からペディキュアサービスあるの知ってる常連さんは、初日に一気に押し掛けるから!

本当は、もっと前から買いたいの我慢してたし、一人で大量購入してくれるお客様もいるからね」


「はぁ、…すごいね」


年中スニーカーで、寿命ギリギリまで一足だけを履いている私には、未知の世界だった。


「俺が気分で瞳の色変えるのと一緒だよ。

彼女達は服によって変えてるけどね」


「ふぅん」


和馬の瞳は今日は紫だった。


「これ、度は入ってるの?」


私は和馬の瞳を見つめた。

「ううん。入ってないよ。…て、このシチュエーションは、ヤバくない?」


「は?」


私は首を傾げた。


「一週間分のお礼をしたいけど、蝶子ちゃん、俺のジャンルの靴は興味無さそうだしな〜」


「すみませんね、スニーカー派で」


(そろそろいいかな?)


私は置いてあった靴下に手を伸ばした。

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