貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い《MUMEI》熱
「ホラ、言わんこっちゃない」
「……何度?」
「38度5分」
見事にオレの熱が移った由自は、今日は朝からおとなしく寝てる。
「オレが帰ってくるまでおとなしく寝てろよ。お前の今の仕事は熱を下げることであって、女を抱くことじゃない」
「わかってるよ」
「もしヤったら金輪際お前とは関わらないからな」
「……俊はそれで我慢できる?」
「めちゃくちゃ余裕」
期待していたような返事がもらえなくて、由自はがっかりしたようだった。
「あ、そうだ。何か欲しいものある?帰りに買って来てやるよ」
「ん――…俊」
「何?」
「俊が欲しいよ」
「…さすがにオレは売ってないなぁ。……ってバカ!ふざけんな」
「ははっノリツッコミうまいな!」
「ないのか?」
「じゃあヨーグルト…と、りんご」
「わかった」
「あと、コンドームね」
「……オイ」
「俊が大切だから、頼んでるんだよ?」
顔が軽く赤面した。
いちいちこういう優しい言葉に反応してしまう。
「そんなこと言うってことは、女は今日は抱かないってことか?」
「今日だけじゃないよ。ずっと抱かないからね」
「何で?」
「俊のために」
「そこまでしなくていいよ」
「するよ。俊が悲しむ顔なんて見たくない」
耳まで熱くなってきた。
照れを隠そうと、急いで部屋を出た。
前へ
|次へ
作品目次へ
無銘の作品を探す
無銘文庫TOPへ