《MUMEI》 *茜色*「──お嬢様」 「‥‥‥‥‥」 「お嬢様、起きて下さい」 耳元で囁く声がする。 瑠果はそれに気付くと、薄目を開けた。 見慣れた執事の顔がある。 「‥‥すまん、眠ってしまったようだな」 瑠果はベンチに座り直すと、まだ眠たげに欠伸をした。 そして、頭上から降り注ぐ光の色が変わっている事に気付いた。 「夕方か‥」 夕陽の中で、2人の影が長く伸びている。 「そろそろ帰りましょうか」 「ああ。そうだな」 瑠果は差し出された手を取って答えると、ベンチから立ち上がる。 枝に止まっていた鳥が1羽、茜色の空へと飛び立った。 前へ |次へ |
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