《MUMEI》

敦君がトイレに行ってすぐ私は店員を呼んだ。


「すいませんビールのおかわりを…」


そう言って目の前にあるビールを飲み干した。


「美樹ちゃん飲むペース早いなぁ…」


奈美が驚いている。


「今頼んだの何杯目?」


「五杯目」


すかさず鈴木が答えた。


な、なんで鈴木が…
さりげなく数えてたってこと?


「生の五杯って結構な量やけど…大丈夫?」


奈美が心配そうに聞いてくる。


たしかに胸の重苦しさは消えていた。


お酒で麻痺しちゃってるんだ…酔ったかな…


「少し酔ったかも…でもこのくらいが一番楽しいんだよね」


そう言っていたら五杯目が運ばれてきた。


そして私はまたグビッと飲む。


何かしてないと落ち着かない。


だからまた飲む。


すると奈美が私の目の前で鈴木に甘え始めた。


「明日バレンタインって知ってる?」


そう言いながら、テーブルの下でこっそり手を繋ぐのが分かった。


鈴木は私の手前、リアクションを小さめにする。


なんなの、この二人…ムカッ


そこへ敦君が戻ってきた。


「ごめんごめん。ただいま戻りました!」

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