《MUMEI》
攻撃準備
六杯目のビールを飲みながら私はさらに質問した。


「でもさー、奈美も"貴士くん"も年末は恋人がいたんだよね?よく一緒に年越しできたね」


いかにも素朴な疑問風に聞いてみた。


鈴木は気まずそうな顔をしてうつむいた。


しかし奈美は相変わらず嬉しそうに答える。


「これがまたラッキーなことに、お互い相手は旅行だったり、実家に帰ったりしとったんよ♪」


ラッキーだとぉ!?


ビールをがぶ飲みし、荒々しくグラスを置いた。


ドンッ!!


「ふーん良かったね!!」


と言いながら、膝の上で手を握りしめる。


「で、二人共ちゃんと別れること出来たの?」


この質問には奈美は複雑な顔をした。


「実はまだ揉めとんねん…私の方は元カレのとこに荷物がたくさんあるし…」


奈美は鈴木をチラッと見てから…


「貴士の元カノはフラれたくせに部屋に入って私の歯ブラシを捨てたり…」


は?ラーメン食べようって誘ってきたのは"貴士くん"なんですけどっ!


鈴木もさすがにヤバいと思ったのかフォローする。


「いや…あれは勝手に入ってきたわけじゃないから」


「え?そうなん…でも歯ブラシは許せへん!!性格が悪すぎるわっ」


奈美が怒りをアラワにすると、男性二人は口が開いたまま固まる。


「だけど、その彼女も普段はそんなことしないんじゃない?ねぇ、"貴士くん"どうなの?」


私はついに矛先を鈴木に向けた。

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