《MUMEI》
*気楽*
「「─────」」


あの教会まではさほど遠くない。

2人は澄みきった空の下を歩いていた。

「あの、本当に宜しいんですか?」

「何がだ?」

「僕とお嬢様の2人だけの式で」

「ああ。その方が気楽だ」

すると紫堂は苦笑した。

「やはりお嬢様はお嬢様ですね」

「ん?」

「そう仰る所、お嬢様らしいです」

「そうか?」

「はい」

「そうか──‥そうかも知れんな」

瑠果は執事にニッコリと笑いかけ、そして視線を上に向ける。

空よりも澄んだその瞳は、遥か彼方を見つめていた。

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