《MUMEI》

「人をからかうのもいい加減にしてよね」


「やだな〜、好きだからからかいたくなるのが男ってもんでしょ?」


「…馬鹿じゃないの?」


(私の事なんか好きじゃ無いくせに)


「酷いな〜」


言いながら、和馬はヘラヘラ笑っていた。


「じゃあね」


「あ、蝶子ちゃん、質問!」


「…何?」


一応、仕事関連だったら困るから、私は足を止めた。

くだらない質問なら、即帰ろうと思った。


「蝶子ちゃんは、浴衣着ないの?」


「着ない…けど」


(一応、聞いてみようかな?)


「ねぇ。もしかして、浴衣…好きなの?」


「そりゃ…」


?


和馬は私の顔を見た。


そして


「嫌いだよ。俊彦も孝太もそう言ってた」


ときっぱり言った。


「…そう」


「何で?」


「別に。じゃあね」


そして、私は『クローバー』に戻った。


六日に『シューズクラブ』に行った時。


「俺、浴衣嫌いだから」


「?うん」


黒い浴衣の孝太が何故か突然言ったので、私は驚きながらも頷いた。


そして、最終日の七日の昼。


「俺、浴衣大っ嫌いだから!
本当に本当だからね!
絶対着ないでね!」

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