《MUMEI》

白い浴衣の俊彦が、私に力説してきた。


(何か、…おかしい?)


和馬や孝太に比べて、俊彦は不自然に見えた。


「ねぇ、…本当に?」


「ほっ…」


「本当だよ。俊彦、仕入れ確認よろしく」


「あ、あぁ。じゃ、蝶子ちゃん、またね」


俊彦は慌てて倉庫に向かった。


(やっぱりおかしいような…)


俊彦の様子は気になったが、私は和馬から弁当代を受け取り、『クローバー』に戻った。


「ただいま戻りました」


「おかえりなさい。
そうそう、今夜は『赤岩』で打ち上げやるから、お店、ティータイム終わったら閉めるわね」


「珍しいですね」


商店街の打ち上げは、『やきとり圭介』か『クローバー』でやることが多かった。


「今日は特別だからね。
ちゃんとオシャレしてね」

「え〜」


『赤岩』は麺類のお店だ。

「わざわざオシャレしなくても…」


「お願い!今日だけ!」


咲子さんが私に頭を下げた。


(…困った)


私は、咲子さんには、逆らえず


「…今日だけ、ですよ?」

「ありがとう!」


結局、私は、ティータイムが終わったら、着替えとメイクをすることになった。

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