《MUMEI》
deeper than black sideA
ようやくと言うかもうと言うか、とにかく秋になった。あれほど勢力を誇っていた蝉の大合唱も焼き焦がすような太陽もすっかり鳴りをひそめ、その移り気な空模様と気温に誰もが慌ててジャケットを出してみたりブーツを出してみたりした。
長い夏休みを帰省もしないままほとんどの時間を大学の課題やバイトに費やしたため、俺の浦島太郎感覚はひとしおだった。そして思い出せばそのほとんどの時間を、あの茶髪男と共有していたことに驚く。バイトが終わればどちらかの家に行き、コンビニ飯を食ったあとゲームやらDVDやらに興じる。疲れたら寝るし、用事があれば出ていく。バイトのない日は遊びに出かけ、適当な女の子を引っ掛けたりもした。お互い幸か不幸か彼女がいなかったため、有り余る時間は自然と共有することになった。

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