《MUMEI》

自分で勝手に結論付けた感情のブレは時折思い出したように脳髄に溢れたが、1ヶ月もすると一緒にいる時間の長さのおかげで慣れた。正体不明の突発的な感情を、ゆるやかな理性が封じていた。

何も問題ない

何度も口にしたり頭の中で繰り返した言葉の通り、このときの俺はいつもと変わらない日常を送っていた。たぶん誰にも気付かれなかっただろうし、俺自身ですらあまりに疎くて無自覚だった。

それでも時間と共に少しずつ体内に溜まっていく何か。
俺の中で渦巻くその黒い感情に気付くのは、もう秋も終わりに近いころだった。

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