《MUMEI》

……親に泣かれるなあ。

しみじみと寒空の下思い知らされた。



「……おー水瀬ぇ、参加するか?」

馬鹿七生め、何を言ってんだ!

水瀬……、無表情でこっちをただただ見ている。
そんな俺は表情を気にするまで余裕が無い。
顎の辺りが冷たいから唾液が出てるかもしれない。


………………親に泣かれる前に俺が泣きそうだ。

「遠慮しとくわ。お熱いの邪魔するほど野暮じゃないの。大丈夫、私口は固い方だからね。
では……ごゆっくり。」

水瀬、助けてはくれないか。元彼が男と出来てたってのは複雑かな……

満面の笑顔で去っていく彼女は大人びててかつて好きだった彼女と全く別人で、そして……カッコイイ。

あ、水瀬と七生ってやっぱどこか似てるよな。
水瀬が七生に似ているって表現の方が近いかも。

無意識に七生を意識していたってことか?

じゃあ俺はいつから七生に惹かれてたことになるんだろう……嫌なことに気付いてしまった。
まあ、好きなんだから嫌ではないのだけれど。



「聞いてるか?」

七生の声で引き戻された。
聞いてないでした。

「二郎ごめんな。」

乙矢が奇しく笑う。

「水瀬と話してたんでしょ、内容は?」

七生が詰問してくる。
最悪だ、言ったのかよ……!

「内容って特には……っ」

いい加減離して欲しい。

「復縁なんかされたら俺、俺……っ」

顔を擦り寄せてきた。

「七生……」

酔っ払いはすぐ泣く。
両手が押さえ付けられたままなので舌先で拭う。

「俺……肉体で繋ぎ止めるしかっ……」

「二郎ってどうしてこの馬鹿を選んだの?」

乙矢の的確な質問。

………………俺が尋ねたいくらいだ。

「惚れた弱みかな……」

惚れられた大弱点の間違いかも。

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