《MUMEI》
鬱積
"貴士くん"の怒声で一瞬静かになる。


しかし私の鬱積していた感情が一気に飛び出した。


「いい加減にしろ?それはこっちのセリフよ!」


事情を知らない奈美が、


「美樹ちゃん、飲みすぎだよ・・・落ち着いて」


と心配そうに声をかけてくる。


元はと言えば、彼氏いるくせにあんたが鈴木のことを好きになったから・・・


「奈美もさぁ彼氏いるのに他の男に手出すなんてサイテー。絶対に罰が当たるんだから」


奈美が目を丸くする。


「あ、でも"貴士くん"も同じだ!まぁ、似た者同士、仲良くやればいいんじゃない?二人で幸せになればいいよ」


私は言いながら涙が出そうになった。


「ていうか大体、"貴士くん"は信用できないよ。奈美もそのうち捨てられるんじゃない?もしくは"貴士くん"が捨てられるか・・・」


「そんな美樹ちゃん、ひどいっ!」


奈美が泣きそうな顔になる。


「美樹子ちゃん・・・そろそろ帰ろう・・・」


敦君が強制終了しようとする。


「言われなくても帰るよ。私がいると、せっかくの楽しいお食事会も台無しだしね!じゃ、さようなら」


私はお金も払わずに店を出て、タクシーに飛び乗った。

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