《MUMEI》
*名前*
「‥‥あ」

そして思い出したように紫堂は続ける。

「そうでした‥ひとつ忘れていた事があります」

すると瑠果はキョトンとする。

「何だ‥?」

「これからは冬夜とお呼び下さいね」

「な‥?」

瑠果は唖然とした。

掟には、主人は召使を名前では呼んでいけない事になっている。

(い、いきなり名前で呼べと言うのか‥?)

結婚したのだから、確かに掟は無効だ。

だが。

ちょっと待て、と瑠果は思う。

あまりに唐突過ぎてよく事態が飲み込めない。

そんな瑠果に、冬夜は悪戯っぽく笑いかける。

「命令、と言えばお分かりですよね」

「‥‥‥」

これには流石に参った。

第一瑠果は今まで彼の名前すら知らなかったのだから。

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