《MUMEI》

そう思うと一刻も早くあの部屋に帰りたくて、俺はスウェットのポケットに手を突っ込んだまま少し早めに歩く。ビニール袋がカシャカシャと音を立てている。
冬が近くなってきた最近は、太陽が沈むとちょっと寒い。ところどころ電灯が光る道も、誰もいない公園も、薄暗くて寂しそうだ。
ざり、ざり、裸足に引っ掛けたサンダルが荒い道路にけずれる。

「っわ、」

アパートがすぐそこに見えてきたとき、どん、と人にぶつかった。薄暗くてわかんなかったなー、相手がお年寄りとか子供じゃないことに感謝。

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