《MUMEI》

見ると、ぶつかってしまった相手は、俺よりちょっと背の高い男だった。

「すいません」

薄暗くて顔はよく見えないけど別に怪我もしてなさそうだし、軽く謝って横を通り抜けようとする、と、コンビニ袋を下げてたほうの手を捕まれた。
うわ、なに、ちょっと怖い人?
こういうときに逆らったら相手を怒らせるだけだ、俺は素直に立ち止まって振り返る。

「あー‥‥」

あれ?普通じゃん
見た目で判断しちゃダメなのはわかってるけど、俺の手を掴む相手はヤクザさんでもヤンキーでもなかった。俺と同い年ぐらい、服装もシャツにジーンズと至って普通だ。

「怪我はないですか?」

声も穏やか、俺の腕を掴む手の力がちょっと強すぎるけど。

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