《MUMEI》
sideA
時計を見上げるともう30分近くもたっていた。レポートを何とか書き終えた俺は途端に手持ちぶさたになって、机に置いたままの携帯を開く、着信もメールもない。

ずいぶん遅いな、立ち読みでもしてんのか?

レポートにざっと目を通しながら机の上の小箱を掴む、ぐしゃり、軽い手応えが残機ゼロを示す。最悪だ。煙草も頼んどくんだった、思わず舌打ち。
携帯を開く、閉じる、開く、閉じる。カスタネットのようにカチカチ。今電話したら間に合うか?時計を見上げる、出ていって30分、片道5分だからもしまだコンビニにいるなら20分以上コンビニにいることになる。
いくらなんでもそれはないか。思ってもニコチンの誘惑には勝てず、結局俺は携帯を開いた。

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