《MUMEI》

「あ、そうだ、アドレス交換しない?」
「はい!」





は〜…、アドレスやっと交換出来る…つか折原、坂井さんに俺のアドレス教えてなかったみたいだ。




お互いの携帯を向けながら赤外線でアドレスを登録しあう。



「フフッ、とりあえずメール一号送るな〜」
「はい」


俺は受信した携帯を開きメールをみる。
「…あれ?これは?」


何故か宜しく〜wの下に坂井さんのとは違うアドレスが書いてある。



「それ真菜の!良かったらメールしてやって?なんか最近落ち込んでてさ、なんだか俺じゃどうにもなんなくて」



「え?折原落ち込んでるんですか?」



坂井さんはちょっとだけ笑いながらじゃあねって立ち去ってしまった。





ちょっと複雑な心境のまま楽屋に戻ると羽鳥だけがいて、真剣な表情でPCに向かっていた。


「他の奴らはまだ?」

「まだ」

掛け時計を見るとまだ時間は早い。



俺達はゲストの都合で大幅に時間をずらされ各々に時間をつぶしている訳だ。


羽鳥のPCを覗き込むと何やらバーの検索をしていて


「飲みに行くの?」

「まーな、女がたまには違うとこ行きてーって言うからさ、いーちゃんどっか良いとこ知らない?…って聞くだけ無駄か」


「は、どーゆう意味だっつーの!」



俺はドカッと羽鳥の隣に座り坂井さんが買ってくれたお茶を飲む。


「だっていーちゃん酒苦手だわ女作んねーわだもん、バーなんかまるっきり縁ないじゃん、つか誘ったってついて来たことねーし」



「当たり前だろ、まだ未成年なんだから行けっかよ!」



「はー、バカな奴〜、そんなん守ってんのお前だけ!つかさ、片想いしてた子に振られた傷そろそろ癒えたか?女紹介すっから今日遊ばね?」



「…いーよ、紹介は…、好きな子出来たし」


「マジ?」



「うん…、ちょっと衝撃的に惚れてしまった…」




どんな子だって聞かれて正直に話した。
ちょっと誰かに聞いて貰いたい気分でもあったし…。




「ヒャハハハハ!マジか〜!つかまた片想い!いーちゃんマジ使えね〜!」




羽鳥はテーブルをバンバン叩いて爆笑している。




「笑うな!人が真剣に話してんのによー!もういい、ほっといてくれ!」



「ハハッ、ゴメ〜ン!つい!な、俺協力する!つかさせろ!」



「や、ヤだよ!断る!」



「ダメ、もう俺決めたから」





――羽鳥は言い出したら聞かない性格だ。





――ヤバい…!!

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