《MUMEI》
最後の一軒
「あともう一軒って、そこは一部屋しかないんだからね!!」


私は佐久間に対して、ここでさっさと決めないと大変なことになる、くらいの勢いで言った。


「分かった次で決める!」


佐久間は前向きに力強く言った。




私は佐久間の返事を聞いて脱力しながら、仕方なく太一のマンションに向かうことにした。




太一の住んでいるマンションの良さを、私は十分に知っているだけに、佐久間を連れていきたくなかった。



やっぱりリストから消しとけば良かった…


今さらながら後悔する。


「着いたわ、ここよ」


佐久間は今までの様に無駄口をたたかず、外観やエントランスなどの外側の環境を真剣に見ている。


その今までとは違う雰囲気に嫌な予感がする。


「さっそく部屋にも行ってみよ!」


佐久間に言われて私は渋々着いていく。



幸いにも佐久間に紹介する部屋は太一とは別のフロアだった。


とは言え、バッタリと出くわす確率は高い。


「もうサッと見てサッと帰ろうね!」


私は佐久間に懇願する気持ちで言った。

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