《MUMEI》

瞳さんが、私の手を引いて、『赤岩』の入口まで誘導した。


(まさか…)


打ち上げが『赤岩』になり

咲子さんからオシャレを強要されて


双子と衛さんも参加した理由


「さ、行くわよ。今日の主役はあなただからね」


そう言って、瞳さんは『赤岩』の入口を勢いよく開けた。


パーン!!


「えぇ?!」


クラッカーの音と煙と火薬の香りの中で、皆の声が聞こえた。


「お誕生日おめでとう!蝶子ちゃん!」


ーと。


今日は


七月七日は


七夕であると同時に


私の誕生日だった。


(ん? 視線?)


「あ〜し〜く〜び〜
ふ〜く〜ら〜は〜ぎ〜」


呪文のような呟きが聞こえた。


(私は何も見なかった。聞こえなかった)


「やめろ、変態」


「痛い!暴力反対!熊!やめろ」


「誰が熊だ」


「すみません、克也様」


「やっぱり克也で正解ね」

私が絶対見ない方向を見つめながら、瞳さんは呟いた。


(さすがです、瞳さん)


もしあれが克也さんでなく、雅彦なら、…


考えて、私は背筋が寒くなった。


「お〜い、離してくれない?」


「「だ〜め!」」

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