《MUMEI》

「ちょっとっ!!!」



「え?」


「え?じゃないわよっ!
なんなのよっ、もういい加減にしてっ!!!」


私は一気に怒りを爆発させた。


「なんでそんなに怒ってるんだよ?」


佐久間はただただ驚いている。


「変な自己紹介とかする必要ないからっ!」


「だってご近所さんになるんだし…、それに愛加ちゃんの知り合いだろ?」


「なんで私の知り合いなら挨拶するのよっ!」


私は怒りと動揺と、訳の分からなくなってしまった自分の感情を全て佐久間にぶつけた。


「愛加ちゃんこそ、俺のことお客様って呼んだりしてよそよそしいじゃん」


佐久間が不満げに言う。


「だってお客様じゃない!何にも間違えてないわっ」


「その割にはサービス精神ゼロだったくせに…」


佐久間が少しいじける。


「でもさ、太一さんて見るからに好青年って感じだよなぁ〜」


たしかに太一は優等生というかお坊ちゃんというか、好青年の印象が強い。


「愛加ちゃんは太一さんがあのマンションに住んでること知ってたの?」


佐久間が嫌なことを聞いてくる。


「知ってたけど、今も住んでるのは知らなかったわ」


半分本当で、半分ウソをついた。


「ふ〜ん」


佐久間は興味なさそうな返事をした。

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