《MUMEI》 「村居の…おじさんとおばさん? それに…」 宴会用の座敷にいたのは、俊彦と雅彦の両親を筆頭にした、いわゆる『引退組』だった。 「今日は、蝶子ちゃんの誕生日だから、おじさん達も久しぶりに蝶子ちゃんに会いたくて来ちゃったんだ。 悪いね。座敷占領しちゃって」 「いいえ、嬉しいです。 あ、つぎますね」 私は村居のおじさんとおばさんのグラスにビールを注いだ。 そして、他の人達のお酌を済ませた。 「じゃあ、ここで先におじさん達と乾杯してくれるかい?」 そう言って笑う村居のおじさんの笑顔は、雅彦そっくりだった。 「はい」 私は隣にいた瞳さんから、グラスにビールを注いでもらった。 「じゃあ、乾杯!」 その場にいた全員がビールを一気に飲んだので (…えい!) 私も気合いで苦手なビールを飲み干した。 「じゃあ、下に行きますね」 瞳さんが私の手を引いた。 「おぉ、金は俺達が払うからな」 それから、村居のおじさんは 「相変わらず、いい足だな」 と呟いたので… (やっぱり、親子なんだな) 内心うんざりしながらも、私は笑顔でお礼を言いながら、座敷を後にした。 前へ |次へ |
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